
東レにとっていい仕事とは?――第2回「東レグループ社員フォーラム」開催レポート
2024年11月18日に、2回目となる「東レグループ社員フォーラム」を開催しました。東京・日本橋の東レ本社をメイン会場とし、今回も複数の拠点に視聴会場を設置。リモート視聴も含めると、リアルタイムでの参加者は3,200人超となりました。
初開催だった2023年よりも、幅広い職種、所属部署の社員に参加、視聴してもらえるよう工夫を凝らしました。紹介事例や登壇者を増やすなど内容の拡充を図り、また、リアルタイム配信の対象を東レグループ会社にも広げました。このnoteでは、社員フォーラム2024の様子をレポートします。

今回のテーマは「東レらしい、いい仕事を考えよう」
一昨年は「東レらしい“挑戦”を考え、未来への一歩を踏み出す日」と題して、東レグループ社員フォーラムを初めて開催しました。2回目の開催となる今回のテーマは「東レらしい、いい仕事を考えよう」。

大矢社長は、このテーマに込めた想いについて、
「初開催のフォーラムでは、ひとりひとりの挑戦が会社を変革していく、そんな挑戦ができる自由闊達な風土を作っていく、といったことがテーマでした。これはこの先も会社にとって普遍的なテーマだと思っています。2回目の開催となる今回は、企業として今後も成長していくために『事業でのチャレンジ』をテーマにしたいと考え『東レらしい、いい仕事を考えよう』としてもらいました。企業理念に、『わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します』と掲げていますが、私の考える“いい仕事”とは、まさにこれと同じです。それを今日はみなさんと共有したいと思います」
と語りました。

前半のプログラムは、エアフィルターと水処理の2つの事業における海外での挑戦事例の動画を放映。動画視聴後に社長と社員によるライブセッションが行われました。私たちが生きていく上で欠かせない存在である水と空気。世界のどのような地域にどういった社会課題があり、私たちに何ができるのか。東レグループ社員のみならず、お客さま、業界関係者を巻き込み、チームとなって、積極果敢にビジネスを形づくる様子が紹介されました。
業界を巻き込んだストーリー作り。中国のエアフィルター事業

「東レには挑戦を許せる社風があり、まわりには“何でもやってみましょう”という考えを持っている社員も多い」(施)
【紹介内容】
PM2.5や新型コロナウィルスの影響で空気清浄機が普及し、一時期は中国国内での需要が急拡大していたエアフィルター事業。しかし、事態の鎮静化とともに空気浄化への関心は薄れ、市場は縮小。中国のグループ会社 東麗合成繊維(南通)有限公司(以下、TFNL社)は、事業面で大きな壁に直面してしまいます。試行錯誤するなか打開策としてTFNL社が着目したのは中国のホテル業界でした。
目標はホテルの客室に空気清浄機を設置することだけではなく、「綺麗な空気でホテル環境が快適になる」という認識を広めること。中国観光ホテル協会へのプレゼンを粘り強く繰り返し、支援体制の確立に漕ぎつけました。空気清浄機連盟や空気清浄機メーカーともビジネスパートナー契約を締結。「我々が扱う製品の、真の需要はどこにあるのか?真の顧客はどこにいるのか?」と情報を集め、製品の正しい情報を知ってもらい、製品が必要とされる習慣を作りたいというチームメンバーの熱意と好奇心、諦めない心で、ホテル業界での製品普及に一歩ずつ近づいています。


「難しいこと、出来そうもないことをいかにして出来るようにするかを意識してやってきました。それは、そこに価値が生まれると考えたからです。
ホテル業界、製品をとりまくステークホルダーの方々と積極的に対話をすることで、自分たちが知りたい情報だけを聞くのではなく、日頃の世間話のような情報にもアンテナを立てるようにしました。自分たちが知り得なかった情報からチャンスに繋がることが多いことも実感しています」(淡島)
海外で支持され続ける事業でありたい。インドにおける水処理事業。

「研究者である以上、今までにない新しいことをするということは意識したい」(花田)
【紹介内容】
インドでは急速な都市化により水不足が深刻化。安全な水へアクセスできる人口は、インド全体の約半分ともいわれています。東レは2022年、インド・チェンナイ市に水処理研究拠点を開設。国際協力機構JICAの協力を得て、インドの国家プロジェクトとして下水再利用の実証事業に取り組んでいます。
下水は、実は量も質も安定した資源。豊富な下水を活用しない手はないと、実証事業を続けています。海外市場がメインとなる東レの水処理事業。海外で支持されなければ意味がないという強い想いのもと、市場開拓に貢献できるデータの取得に挑んでいます。


地球環境研究所は、おもに水資源問題の解決に貢献する水処理用分離膜製品を多く生み出している。2019年からインドに赴任し、前述の花田さんの前任として、チェンナイでの実証プラント立ち上げに従事。2023年に帰国し現職。
「チェンナイはインドで4番目に大きい都市で、人口密度が非常に高く、深刻な水不足問題を抱えています。水道からの水は、1日に2時間程度しか使えないのです。一般家庭の日々の生活にも大きく影響しています。東レの保有する水処理膜技術が、こうした課題に貢献できることは分かっていましたが、文化や価値観が異なる地域での新規事業の立ち上げは、困難の連続でした。契約や交渉、人材の採用などの仕事もあるからです。
コロナパンデミックも重なり、非常に苦しい時もありました。安心・安全な水を提供するという水処理事業の意義深さと、自分たちの技術への信頼が原動力となり、なんとか環境を整えることができました。」(小林)

「中国のエアフィルター事業には『快適な空間を作りたい』というイノベーションへの意欲、インドの水処理事業には『喫緊の水不足問題を解決したい』という強いパッションがありました。こういった先駆的開拓意識が結実したのだと思います。東レの水処理・環境事業は現在100ヵ国以上に製品を納入していますが、今後は地域的なフロンティアとして、アジアから中東、アフリカへ展開しようと考えています。
また、事業の内容としては、材料から技術サービス、“モノからコト売り”へと広げようとしている。そういったときこそひとりひとりが熱い想いを持って道を切り拓いていくことが必要になります。進める過程で直面する苦労も、成功すれば今日紹介されたような素晴らしいストーリーになると信じて事業部全体で頑張っていけたらと思います。」(下山)
ビジネスリーダーのもとに人が集まり、ビジョンを共有し、目標・目的達成に向けて議論を重ね、協力し合う。良いチームが良い仕事を成し遂げる、と思わされるプレゼンテーションでした。
2024年もやりました!はじめの一歩賞表彰式
続いては、「はじめの一歩賞」の表彰式。活動規模の大小や成功失敗を問わず、挑戦する意欲を讃える社員投票型のアワードです。今回のエントリー数は134件。さまざまな分野の応募案件の中から事務局の審査を通過した厳選17件について社員投票を行い、見事上位5位内に入賞したみなさんが紹介されました。

ともに世界を獲る!アスリートとの初めての共同開発~サニブラウン×東レグループ社員の極限追求~
【代表者】東レ株式会社 スポーツ・衣料資材部 森雅昭(右)
東レインターナショナル株式会社 アパレル製品第2部 松岡秀明(左)
【内容】東レは2023年から陸上競技短距離走トップアスリートのサニブラウン・アブデル・ハキーム選手とグローバルパートナーシップを締結しています。この一環でプーマジャパン株式会社と東レが共同で手掛けたサニブラウン選手のウェア開発が、見事上位に入賞しました。
トップアスリートの要望を起点に、川上から川下まで(企画・糸・編み・染め・生地評価・縫製・販売)一つのチームになることで唯一無二のウェアを創出。今後の素材開発に繋がる貴重な気付きや経験を得ました。

紙、承認スタンプ、ラベルばっかりの校正作業を変えるはじめの一歩
【代表者】東レ株式会社 石川工場 工務保全室 宮本将史(右)
東レ株式会社 石川工場 複合材料品証課 本多憲太郎(左)
【内容】機器を適正に管理し、動作が正確かどうかを知るために必要な作業「校正」。製品の品質保証に欠かせない作業です。航空機などへの用途でも知られる石川の炭素繊維プリプレグ生産工場には、校正対象機器がなんと800台もあり、紙の記録表の発行、承認スタンプ、検査合格ラベル貼りといった繰り返しの手作業に追われ、大切な作業と分かっていても多大な労力がかかる日々…。作業の一大改革のために、生産、工務、品質保証など複数の部署が垣根を越えて一致団結。電子化・自動化、作業のスリム化を実現し、みんなが喜び納得する大きな成果を残しました。

育児休職、看護・介護休暇の取りやすい職場作りへの取り組み
【代表者】東レ株式会社 石川工場 プリプレグ製造部 佐野孝太郎(右)
東レ株式会社 石川工場 プリプレグ製造部 石口幸樹(左)
【内容】働き方改革は国を挙げて推進している取り組みですが、なかなか進まない企業も少なくないのではないでしょうか。多様な価値観・選択肢がある時代の中で、お互いの状況を理解し、助け合って働き続けていくことは容易なことではありません。子育て世代が8割を占めている石川工場のプリプレグ生産課は、自分たちのワークライフバランスをより良く保つため、従業員同士の相互理解と業務改善に本格的に取り組み、要員不足時の柔軟な補勤体制を構築しました。これにより「言い出しづらい」「我慢する」といった状況が減り、育児休職、看護・介護休暇の取得率がアップしました。

『着やすい』幸せを。有明から世界へ
【代表者】東レ株式会社 GO事業部 尾崎真由(右)
東レインターナショナル アパレル製品第1部 羽場理恵子(左)
【内容】ユニクロと東レが共同開発した「ヒートテック」や「エアリズム」、「ウルトラライトダウン」などは日常生活を豊かにするLifeWearとして世界中で愛用されています。GO事業部や東レインターナショナルは会社や部署の垣根を越えてユニクロ向けビジネスを展開しているメンバーですが、彼らが考えたのは、「より人に寄り添う服とはなにか」。
例えば、高齢や病気、障害等で体が不自由な人でも着やすく、見た目も良い服作りを目指して、一歩を踏み出しました。社内では共感の輪も広がり、開発段階では東レの従業員約100名が試着会に参加。思いをカタチにする過程を楽しみながらチャレンジを続けています。

名古屋事業場の用役設備を仮想空間に再現!
【代表者】東レ株式会社 名古屋事業場 工務部 澤田浩規(右)
東レ株式会社 名古屋事業場 工務部 大野文克(左)
【内容】東レ名古屋事業場は、ケミカル、樹脂、炭素繊維複合材料の3つの事業を担う大規模複合工場です。工場の運転に必要な用役(電力、蒸気、水など)の供給範囲は非常に広く複雑ですが、故障時には正確かつ迅速な対応が求められます。
複雑な用役設備を仮想空間(VR: Virtual Reality) に再現し、故障時対応などのスピードアップ・負担軽減に繋げようという取り組みが高評価を得ました。複雑な配管を可視化したことで誰もが分かりやすく、上空や高所など見たい位置からVRで配管を現場だけでなく事務所から確認できるようになりました。活用方法は無限大。トラブル対応の迅速化はもちろん、若手現場教育への活用、VRユーザー企業同士の交流などにも役立っています。

上位入賞は逃したものの、自己実現や自己成長を目的とした取り組みが評価されたお二人の紹介も。定年退職後を見据えた資格取得やボディコンテストへの挑戦といった個性的な取り組みです。社員投票でも応援のコメントが多く寄せられ、会場で呼びかけに手を振って応えました。
「はじめの一歩賞」にはさまざまな分野から応募がありますが、今回の応募内容や成果を活かし、次回からは「職場環境・業務改善」「事業開発」「自己成長・自己実現」などのカテゴリーを設けて募集・表彰することも検討中です。

「惜しくも上位入賞は逃しましたが、目黒さん、多木さんの自己実現、自己成長などの自分磨きは素晴らしいこと。個人のチャレンジを尊重していくこと、それが出来る会社でなければならないと思います。現在、大矢社長のリードで進めているHCM活動というものがあります。Human-Centric Management、すなわち『人を基本とする経営』の意味です。
活動の中身はいわゆるDE&I(Diversity, Equity and Inclusion)の推進で、ワーキンググループを組んでスタートしたところです。ワーキンググループを中心に社内のさまざまな意見を吸い上げ、経営トップへの提言を取りまとめていきたいと思っています。」(柳井)
放送後の反響も大きかった「魔改造の夜」
社員フォーラムの最後を飾ったトピックスは、NHKの人気番組「魔改造の夜」に出場したメンバーの紹介でした。(社員フォーラム開催時は番組放送前)。
番組に関する内容とインタビューは、特設サイトをご覧ください。

「魔改造期間の6週間は想像以上に過酷な日々でしたが、チームメンバー一同、全身全霊で取り組み、素材メーカーとしての特長を生かした大変面白い魔改造が出来たと思っています」(平川)


今回も盛りだくさんの内容だった社員フォーラム。
次回は2025年11月25日に開催決定。2026年4月の100周年を間近に控えた開催となるなか、今度はどんなチャレンジに出会えるのでしょうか。次回も楽しみにしたいと思います!