自分の学びが工場全体の効率化に。バレーボールで培った諦めない気持ちが生んだ新しい喜び
東レで働く一人ひとりに、仕事との向き合い方、大切にしている価値観などを伺いながら、“仕事観”について探っていく連載「わたしの仕事観」。
第5回目は、 エンジニアリング部門 工務第2部の森山美耶に話を伺います。東レアローズ女子バレーボール部(現 東レアローズ滋賀)の選手時代を経て、現在は部署の庶務業務を行う傍ら、「もっと仕事を効率化したい」「人の役に立ちたい」、そんな思いで自ら業務効率化のためのツールを学び、現在は社内のDX人材にも認定され、各工場のDX化を推進しています。
未経験から習得し、自らの仕事を効率化
―森山さんのこれまでの経歴を教えてください。
森山美耶(以下、森山):小学4年生からバレーボールをしていて、中学・高校と日本一を経験し、2005年に東レ・アローズに入団、2010年5月に現役を引退しました。引退後は、東レ滋賀事業場の総務課に所属し、製品展示室「イノベーションプラザ」で案内役をしていました。バレー部時代は、社員でありながらも、バレー漬けの日々だったので、東レの事業のことをほとんど知らなくて…。東レの歴代製品が展示されている「イノベーションプラザ」でお客様をご案内することで、さまざまな製品を知ることができました。
その後、出産・育児休職を経て工務第2部に配属になり、今はクラークという、秘書業務や庶務などのサポート業務をしています。育児休職明けは子育てに追われていたので、程よい仕事量で両立ができていたのですが、子どもが大きくなって手が離れてくると、ちょっと物足りなくなってきたんです。そこから自分で勉強を始めるようになったのですが、その中のひとつが、Power BI※1やPower Automate※2でした。こんなに便利なツールがあるんだって、だんだん楽しくなってきました。独学でやっていたのですが、そのうちに職場の人が「そういえば詳しいんでしょ?」と声をかけてくれるようにもなって。それを他の工場にも伝えてくれて、今は各工場へのツール導入の教育をお手伝いさせてもらうまでになりました。
―現在はどのような教育活動をされているのですか?
森山:各工場で働く方々にこれらのツールの使い方を教えています。また、アプリを使った備品管理を現場の工場へ取り入れるため、そのアプリ構築などにも携わっています。教育というより、ツールを用いて実現したいことの支援という方が近いかもしれません。「便利なツールを入れていきましょう」と、各工場へ出向いて一緒に作っています。
―そもそも、工務第2部でのクラークという業務はどんな内容なのですか?
森山:工務第2部は、東レグループの電気・計装設備、用役設備、建築に関する設計・企画・支援を行う部署ですが、部に関するデータの集約業務や秘書業務、メンバーの出張旅費精算などサポート業務がメインになります。私自身は、直接的な工務の仕事をしているというわけではないんです。
―その中でなぜ自ら勉強しようと思ったのですか?
森山:もともと、私の業務上、データを集約する業務が多かったのですが、それをもっと効率的にしたいという思いがあり、Power Automateを勉強したんです。自動化できるようになると、例えば、各工場のトラブルデータなどは、集約したデータの形ではなく、可視化された状態の方がみんなで共有して分析しやすくなるのではないかと思って、Power BIの勉強も始めました。形になってくると、周りのメンバーで便利だねと言ってくれる方が増え、みんなで共有していったという感じです。
もう一つは、費用削減の視点ですかね。実は、データ集約のようなサービスは、以前から導入されてはいたのですが、Power AutomateやPower BIを自分たちで出来れば、その分のサービスに使っている費用が削減できるという庶務なりの気づきで「削減しましょう!」と自分から宣言しちゃったんです。だから、自らやるしかないと!(笑)
ー最初は、ご自身の仕事の効率を上げるために使い始めたのですね。PC作業は得意なんですか?
森山:実はあまり得意じゃないんです。いまだにExcelでグラフを作れないですし、関数も全然わからないし…(笑)。でも細かい作業や作り上げていくことは、昔から好きでした。お菓子作りや手芸が趣味なのですが、素材から作り上げることが好き。Power Automateはそれに通じるところがあって、1個1個のアクションを作り上げていくとPCが勝手に動いていくのが楽しくなってきましたね。
バレーボールで培った諦めない気持ちが、仕事をやり切る大きな力に
―少し話がそれますが、東レアローズでバレーボールをやってきた経験が、仕事に生きていると感じることはありますか?
森山:学生時代からずっとバレーボール一筋で厳しい環境でした。あまり弱音を吐けなかった中で、忍耐が当たり前だと思っているところはあります。また、目標に向かって突き進む気持ちを教えてくれた当時の東レアローズ監督 菅野幸一郎さん(現 東レアローズ滋賀 ゼネラルマネージャー)には感謝しています。バレーボールで培った諦めない気持ちは、大きな学びです。
―仕事をする上で大切にしていることはどんなことですか?
森山:バレーボールだけでなく仕事でも、つらくても諦めたくないっていうのが私の中にはあって。忙しいからといって、投げ出したりやっつけ仕事でやるのではなく、ちゃんとそれを受け取る人がいることを考えながらやろうと意識しています。
今はアプリの導入があり、とても忙しくて正直投げ出しそうになる時もあります(笑)。でも、待ってくれている人のためにも頑張りたいという気持ちで、なんとかモチベーションを保っています。
―子育てが落ち着いてからは物足りなかったのに一転しましたね。
森山:そうなんです(笑)。結局、人に喜んでもらえるのが好きだからお菓子作りもするんですけど、仕事でも私がやったことで人が喜んでくれるんだと思って今は頑張っています。人の役に立ちたいという気持ちがいつもあります。
―他の工場に教育をしに行くにあたって、ハードルもあったと聞きました。人前で話すのも元々苦手なのだとか。
森山:人前で話すのが元々得意ではないんです。さらに、「クラーク担当がシステム的なものを教えられるの?」という空気感もありました。一緒に教育へ出向いた管理職の人ではなく、私が話し出すと「あなたが教えるの?」みたいな雰囲気もあって。
最初こそ「システム担当者じゃないので細かいところまでは…」という前置きをしていたんですが、そんなことを言うのもだんだん悔しくなって(笑)、必死に勉強しました。こんな質問が来るかなと想定して、準備することもあります。
―今は1人で各工場へ出向いて、説明することもあるそうですね。
森山:はい、「そろそろ独り立ちだね」と言われて、1人で各工場に行くことも多いです。月1回は滋賀以外の工場へ行きたいなというのが目標です。最近は、私と同じようにクラーク業務をしている方やデータを管理されている方へPower Automate作成の支援をしています。教育ではなく、各工場がツールを用いて実現したいことを私が支援するという形で関わっています。
仕事を効率化できる仕組みをこれからも模索していきたい
―ここからは、上司のエンジニアリング部門 工務第2部 工務第1課の課長を務める橋倉さんにも参加いただきます。橋倉さんからは、森山さんの姿はどう見えていますか?
橋倉雅史(以下、橋倉):森山さんは一生懸命で、やると決めたらとことんやる人だと思っています。高い目標を立てて、自らが周りも巻き込んでその目標に向かって頑張ってくれるので本当に頼りにしていますし、信頼しています。
―森山さんにはこれからさらに、どんな風に成長していってもらいたいですか?
橋倉:森山さん自身もさらに勉強して成長されているので、昨年度は「やり方を教えて?」と各工場から呼ばれて教育に行くという関わり方でしたが、これからは自ら各工場の困り事を聞いてソリューションを提案していくところまでできるようになると素晴らしいなと思っています。
でも、それは森山さんだけじゃなく僕ら工務第2部 工務第1課のメンバー全員がそういう仕事をしないといけない。そういう意味では、現状分析・課題を抽出して、提案・解決型の仕事をみんなが目指しているということですね。そのなかでも、森山さんが得意としているPower BIやPower Automateについては、うちのメンバーの誰よりも先を行っているので、そこを得意分野としてこれからも伸ばしていって、提案・解決型の仕事をしてもらえたらと思っています。
また、「DX人材認定制度」※でリーダーに推薦して認定されたので、今年度はリーダーとして推進していく立場になりました。そういう意味でも、各工場の課題を抽出して、解決に向けて関係部署の皆さんと一緒に頑張ってもらいたいと思っています。
―森山さんから見た橋倉さんはどんな上司ですか?
森山:業務の中で気付いたこと、提案したことに対して、やったことがないから駄目とは言わずに挑戦させてくれる課長です。自分が学んだこと、気付いたことが業務効率化という仕事に繋げられて、とてもいい環境で仕事をさせてもらっていると思います。私に期待している部分も日頃からちゃんと伝えてもらっているので、私もその期待に応えたいといつも思って頑張っています。
また、課だけではなく、エンジニアリング部門全体が私の活動を認識してくれています。部門長の松田さんにも声を掛けていただいて、私の仕事を応援してくれています。普段から周りの人が何でも話を聞いてくれるので、すごく働きやすい環境ですね。
―最後に、これから挑戦したいことを教えてください。
森山:これ!ということはまだ見えてはいないのですが、これからもクラークとして人の役に立つ、工場の役に立つ仕事を自分でもっと見つけて、1つでも多く役に立てたらと思っています。働くみんなが便利になって、みんなが使えるツールや仕組みを模索していきたいと思っています。