中高生19人が東レにやってきた!「夏のリコチャレ2024」思い出日記。
ある夏の日のこと。東レ滋賀事業場に、バレーボールチーム「東レアローズ滋賀」のバスがやってきました。姿を見せたのは選手たち……ではなく、19名の中高生。2024年8月6日に未来創造研究センターで開催した『夏のリコチャレ2024(※)』の参加者です。
イベントに参加する中高生には、未来創造研究センター内の見学や東レで研究職に就く社員との座談会など、特別なコンテンツを用意。素材メーカーである“東レ”や、企業で働く研究者の仕事について知ってもらうことが目的です。
参加者のある高校生男子に話を聞いたところ、理系進路を選んだ後、将来はものづくり方面か、研究者の道へ進むか迷っているところ、なのだそう。『夏のリコチャレ2024』も進路の参考になると感じて参加を決めたのだとか。同じように、理系科目が好きで興味を持ったり、進路に悩んでいたりする生徒たちからの応募も目立ちました。
このnoteでは『夏のリコチャレ2024』で、参加者の中高生のみなさんがどのように過ごしたのかをご紹介します。
科学技術系の進路への興味関心を高めたい
この日の『夏のリコチャレ2024』は未来創造研究センターを舞台に、東レの概要説明、施設内の見学、東レ製品を使ったオリジナルスタンプ制作の体験、研究者との座談会という流れで進行。東レCSR推進室 松井 滋樹室長の挨拶からスタートしました。「今日は東レの社員でもなかなか見ることのない場所までご案内する機会です。わからないこと、知りたいことはたくさん聞いて持ち帰ってください!」。
続いて、CSR推進室の中嶋 環さんが東レの基礎知識をレクチャー。日常で私たちが触れるさまざまな製品に東レ素材が使われていることを説明し、「人々の暮らしを便利にしたり、社会的な課題を解決したりするような素材を作る」という、素材メーカー“東レ”の使命を伝えました。まさに、この日見学できる未来創造研究センターは、そういった当社の使命と社会的責任を果たすため、2019年に開所した研究拠点です。
特別に「社員以外立ち入り禁止」のその先へ…
まずは、未来創造研究センター内を歩きながら、東レの研究・技術開発の現場に触れてもらう見学会を実施。参加者は2班に分かれ、それぞれに現場の研究員が引率します。参加者の疑問や相談にもすぐ応えられるようにしています。
研究センター内の国際会議場や、参考図書の並ぶ交流室などもみんなきょろきょろ見回しながら歩きます。センター内には研究室や執務エリア以外にも「交流スペース」がたくさん設けられています。「いろいろな部署の人と顔を合わせることができるので、研究者同士も縦横のつながりが持てるのが良いところ」とは、案内役を務めた電子情報材料研究所の植田朋乃可さん。
「社員以外立ち入り禁止」と書かれた扉の先に進むと、参加者からはどこか緊張感も…それもそのはず、実験室がずらりと並び、それぞれで実験している様子が見える箇所もあるのです。その扉には研究室内に置かれている真空乾燥機、防爆オーブン、超低温冷凍庫、オートドライデシケーターなど、見慣れない機器の単語が並びます。薬剤や溶剤を洗い落とすためのエマージェンシーシャワーブースもあり、説明を受ける参加者の表情も新しい言葉の響きに興味を惹かれている様子。
大型の実験機器が置かれた部屋も見学。海水を真水に変えるといった「水ろ過膜」をつくる実験室や、人間の体内に利用できる医療用ポリマーを用いるための3Dプリンターといった東レの最新研究に触れる機会も(特に3Dプリンターは中学生男子に大人気でした!)。
3Dプリンターでは「臓器は人によって微妙に形がちがうので、個人に合った医療機器を作れればフィットする。だから開発が盛んに行われています。最小でも1cmくらいのものまで、ここにある機器でも試作はできますよ」と説明を受けると、参加者から思わず「すげー」と声が上がる場面も。最近では学校に3Dプリンターが設置されていたり、技術科目でCADを体験したことがあったりするそうで、それを聞いた東レの研究者たちからは羨ましがる声も。理科教育の現場の変化も感じ取れる一時でした。
TORELIEF™でオリジナルスタンプ制作に挑戦!
未来創造研究センター内の見学を終えたら、印写システム事業部の田中 芙実さんにバトンタッチし、東レの「TORELIEF™(トレリーフ)」を使ったオリジナルスタンプ作りに挑戦。
TORELIEF™は食品・飲料・化粧品といった製品ラベルやパッケージ、缶やプラスチックの容器、伝票を始めとするビジネスフォーム、ゴルフボールなどに用いる曲面印刷など、幅広い用途で世界的シェアを獲得している凸版印刷用の感光性樹脂版。
UV露光後に水だけで現像が可能で、溶剤が不要であるというメリットは、今回のスタンプ制作にもぴったりです。
フィルムに油性ペンで好きな絵柄を書いたものを密着させ、光照射をして反応。その後に洗浄と乾燥という工程でスタンプを作りますが、この工程は印刷用の凹凸構造を作る製版工程とほぼ同じ。科学的な反応と印刷工程という両面を経験してもらえる実験となっています。
実際に「スタンプ作り体験の凸凹を作るしくみについて考えるのがおもしろかった」という参加者からのコメントもありました。
研究者座談会でリアルな日々を伝えつつ、進路相談も
プログラムの最後は、東レの研究者を交えた座談会を開催。2〜3名ずつにそれぞれ研究者が付き、自己紹介やリアルな経験談、普段の生活や仕事に対する思いを伝えます。
仕事のことだけでなくバックグラウンドも含めて話すようにしたのは、決して「研究者」が特別な存在ではなく、自分たちと同じように中学生や高校生の時代を過ごしてきたことを感じてもらいたい、という考えがあるからです。
「私の一日のスケジュール」「研究者になろうと思ったきっかけ」「仕事で大変なこと」「やりがいを感じるとき」「休日の過ごし方」など、研究者のありのままが盛りだくさん。なかには、高校生の希望進路が研究者の出身大学だと分かり、具体的な進路相談にも及ぶチームも見られました。
座談会を担当した研究者は「職業としての研究者を見たことがない、初めて話したという子もいました。いつか自分の進路を考えたときに、東レという会社で研究者に会ったことがあるな、研究者の仕事について聞いてみたな、と思い出してもらえたら嬉しいですね」と顔をほころばせていました。
座談会後はアンケートへのご協力をお願いして、最後は記念撮影。今回の『夏のリコチャレ2024』は終了(おつかれさまでした!)。
アンケートでは「企業の研究職や大学の詳細について、さまざまなことを聞くことができ、理系の道に興味を持った」という声や、「ペットボトルのラベルや衣服など、生活にかかせない物がどうやって作られているのか、それに込められたたくさんの工夫がわかった」「座談会で来てくださった方との会話がとてもはずんで楽しかった」といった感想が並びました。
東レグループ全体で理系人材の育成に取り組みたい
世界的に科学技術競争が激化する中、技術によるイノベーションを担う人材の育成は、東レグループにとっても大切な社会的課題の一つと捉えています。日本では1980年代後半から子どもたちの「理科嫌い・理科離れ」が問題視されるようになり、理系科目に対する興味関心の低下や、若者の進路選択時における理工系離れなどが起きています。
この状況を好転させるためには、子どもが幼いうちから理科に興味を持ってもらう必要があるといわれ、その推進には教育現場だけでなく、産業界からの支援も望まれています。
東レのCSR推進室は2017年から『リコチャレ』への協力を続けてきました。ほかにも、東レグループの技術やリソースを活用した出張授業やイベントを通して、子どもたちに科学技術の面白さや可能性に気づいてもらえるよう、今後も活動を発展させていく予定です。CSR推進室の中嶋さんに、今回の『夏のリコチャレ2024』を振り返りながら、さらに話を聞きました。
「『夏のリコチャレ』を実施する目的の一つは、中高生に研究や技術の仕事の魅力を伝え、科学技術系の進路への興味関心を高めてもらうことです。進路選択までに時間のある中学生にも興味を持ってもらえるよう、研究所の見学コースには、なかなか目にしたり、体感したりすることのない機器や実験を入れるようにするなど、参加者の記憶に残るようなコンテンツ開発を心がけてきました。いずれの内容でも子どもたち自身が考えをめぐらし、理系科目への興味関心や進路選択の参考にするための「気づき」となる機会になればと考えています。
今後の可能性の一つには、東レ滋賀事業場以外の拠点での実施が挙げられます。それぞれの拠点や事業の特徴を生かしながら、以下のような新たなコンテンツの開発も進めていきたいです。」
また、今回の『夏のリコチャレ』でも業務の合間を縫って多くの社員の協力を得たことへの感謝とともに、「研究者が真剣に子どもたちの声に耳を傾け、良い表情で対応してくれる姿を見ると、毎回、心にグッとくるものがあります」と中嶋さん。今後は「中高生と接する機会が、社員自身にとっても成長につながるような取り組みにしていきたい」と話します。
東レでは引き続き、グループ全体で理系人材の育成についても取り組んでいきます。東レの素材やテクノロジーが身近な生活に活かされていること、地球環境問題の解決に役立てられていることを伝え、将来世代である子どもたちの科学的なものの見方や考え方を育む機会を、出張授業やイベントを通じて提供できればと考えています。今後、noteでも将来世代に向けた取り組みを「紡ぐ、明日へ」として紹介していく予定です。お楽しみに!